京都御池メディカルクリニック[予防医療、検査、がん治療]

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ハーフマラソン初挑戦のなかで感じた医療の本質

昨年からコラムに書いていた初挑戦のハーフマラソンは無事完走いたしました。晴天の澄んだ空気の中、田舎道コースを走りながら色々と感じ、考えたことをコラムに書きたいと思います。

最後1か月半くらいはケガで十分な準備ができなかったのですが、2時間7分と練習以上のタイムで走り切ることができました。最後の方はカラダのどこにも力が入らない地獄のような感覚でしたが、振り返ると沿道で応援してくれている多くの方々や一緒に走っている方々のおかげで最後まで足を止めることなく走り切れたように感じています。

当院は通常とは異なるアプローチを行っているクリニックであり、栄養、自律神経、運動を中心として老化抑制や健康維持、不定愁訴の改善などを患者様と目指しています。もちろん医薬品を含めた妥当性については今までのキャリアから十分に理解をしていますので、客観的に見て患者様の状況に応じた最適解を一緒に考える日々を過ごしています。

昨年10月上旬にマラソン大会出場を決心し準備を進めていました。きっかけは疾病予防と健康寿命維持という広義のアンチエイジングを専門としながらも、自分自身がなかなか運動をできていなかったことです。もともとは運動を継続していた体育会系の人間でしたが子育てと仕事に忙殺され運動量が減ってしまい、気づくと太ももや腕、胸板などが徐々に細くなり階段昇降が辛くなるなど体感としても老化進行を感じていました。

10月トレーニング開始当初、当院トレーナーの與田にカラダの状態や各部位の筋力・左右差、可動域、弱点などを客観的に評価してもらい、自分自身もカラダへの理解を深めた上でオーダーメイドのトレーニングをこなしていきました。カラダのコンディションが上昇してくると、早く走れるようになることが嬉しく、さらに調子に乗ってしまい決められたメニュー以上を走ったためか、12月の中旬から太ももの裏(ハムストリングス)を痛めて、そこから大会まで1か月半の間、まともに走ることができない状態でした。もう走れないかもしれない、走っても完走できるだろうかという不安のなかにいました。しかし家族の支え、トレーナーの励まし、スタッフの応援等があり、その時点でできる最大限のカラダの調整と、その状況下でも実施可能かつ完走に必要な筋力トレーニングを組み合わせてもらい、さらに医学全般や栄養医学の知識も総合的を用いながら1月28日マラソン大会初挑戦は無事に完走することができました。

栄養状態の評価や運動負荷に伴う不足栄養素の補充、酸化ストレスに応じたアプローチの介入(以下参照)、トレーナー與田によるファシアリリース施術とオーダーメイドのトレーニング、また施術によるフィードバックでのメニュー修正などは、今後も疾病の方のみならず健康維持を目的とされる方、何かスポーツでチャレンジしたいと思っている方、すでにスポーツをしておりブラッシュアップしたい方など多くの方々にカラダのトータルマネージメントとして実践していただきたいです。通常のパーソナルジムでは実施困難である当院ならではのアプローチを用いて皆さんのカラダとココロの健康維持や挑戦に伴走したいと考えています。

最後に今回走っている最中は不思議な感覚でいました。太陽のもと山々に囲まれた空気の澄む田舎道を走りながら、自分自身と一緒に走っている他者の’いのち’への感謝と自分自身のやっている仕事の意義をふと考えたりしていました。医療はガイドラインに基づいてデータのある治療法へと患者様を導くことがもちろん重要なのですが、実はそれ以上に大切かつ人間自身が本質的に欲しているものというのはおそらく‘応援’や‘伴走’といったとても基本的なことなのだろうと。医療者は皆それらを十分に理解していて至極当然のことなのですが、医療が’応援’や’伴走’といったことを十分にできていない現状もあるように感じています。健康な方も病気を罹っておられる方もやはり不安という気持ちはどこかに存在していると思います。治療法がスッと決まりそれでスッと治る方は良いのですが、それでも治らない方はどうすれば良いでしょうか?現在病気は無いがそのまま健康を維持していくためには何ができるのでしょうか?応援・伴走してくれた人たちのように、自分自身も引き続き当院へ来ていただく皆様の何か支えになっていくことができればと考えさせられたハーフマラソン初挑戦でした。今後も挑戦は続けていこうと思います。来年度はフルマラソンに初挑戦したいと思っていますのでまた折にふれてコラムに書きたいと思います。

ハーフマラソン翌日、トレーナー與田による施術とそれに基づくフィードバックおよび今後のトレーニング方針の一部を以下に示します。

当院ではトレーニングメニュー→トレーニングの実施・継続、日常生活や大会への参加など→ファシアリリース施術によるカラダの使い方の見直し・トレーニングメニューの見直しというサイクルを続けることで効率的かつ妥当性を持って様々な方々への運動介入を医療機関として実施していくことができます。

■レース後のファシアリリース

レース完走後の翌日(1月29日)にファシアリリースを実施した。その際、右膝関節の外側付近に痛みが生じている旨を伝えられた。ゴール後に痛みが顕在化したとのことである。また、レース中盤から股関節(大腿四頭筋起始部に違和感も生じたとのことである。

このことを踏まえて下肢からファシアリリースを開始したところ、下腿三頭筋周辺に緊張や硬化がなく、圧を加えても痛みもないようであった。私の手指にも硬化や疲労を示す感触はなかった。これは登坂場面において下腿三頭筋に依存せず大腿四頭筋中心に推進力を得ていたことと速度を抑えて走行した結果と思われる。体幹と大腿四頭筋のレジスタンストレーニングが奏功したことによるものと考えられる。

膝蓋骨に触れると固着したかのように左右の可動域が全くない状態であった。恐らく大腿四頭筋が疲労により硬化し短縮していると疑い、大腿四頭筋及び縫工筋の起始に触れると緊張して硬化している腱に触れることができた。これに圧を加えると特に右側において痛みを訴えていた。大腿四頭筋にファシアリリースを入念に実施した結果、膝蓋骨は内側に移動できるようになった。これを解消し予防するために大腿四頭筋等の筋力、筋持久力を向上させることが重要であると感じた。

右膝関節外側やや下の部位に痛みを訴えているので腸脛靭帯及び中臀筋を圧迫すると痛みが生じた。かなりの緊張と硬化、短縮が起きていた。恐らくランナーズニー(腸脛靭帯炎)であろうと思われる。これは元々腸脛靭帯の柔軟性が乏しく内反膝並びに回内足傾向にあるため発生しやすいアライメントであることが考えられる。外側広筋、腸脛靭帯、中臀筋にファシアリリースを実施したところ、同部位の痛みは軽減したとのことである。今後はケアを早めに行い柔軟性を確保することが重要だと思われる。

中臀筋とともに着地の衝撃を緩和する内側広筋には緊張や硬化はみられなかった。内反膝傾向のため、内側広筋が働きにくいアライメントであり、その筋量も少ないことから膝関節が外側に流れることを抑止できなかったと思われる。今後歩行並びに走行する上で内側広筋の強化は必須である。膝関節O.A.患者の多くはこの内側広筋が廃用性萎縮を起こしたことに起因するという。

登坂場面は急勾配かつ距離があったので呼吸器は相当負荷を負っていたと推測する。これを解消し走行速度上げるために大胸筋並びに広背筋の強化に取り組んできた。先にも述べたがこの目的はこれらの筋肉を呼吸筋の補助として用いるためである。期間が短いため十分とは言えないが、それでも一定の効果はあったと思われる。胸筋、肋間筋も含めて胸郭に付随している筋肉にファシアリリースを実施すると相当の痛みがあった。更なる強化が必要である。

また、三角筋の筋腹及び停止部に圧を加えたところ痛みがあり、感触も疲労による緊張と硬化を感じ取ることができた。約2時間もの間、体重の6、7%ある上肢を支え振り続けた結果、疲労するのは当然である。ここも今後強化する必要があると感じた。と同時に胸鎖乳突筋の疲労硬化も顕著であった。これも長時間に渡り頭蓋を支えたために疲労したものと思われる。特に登坂場面では頭部を振っていたと思われるので、今後は頸部の筋力及び筋持久力の強化が必要である。

転じて肩甲骨周辺のローテーターカフの疲労はほとんどみられなかった。腕振り動作の中で余計な動き、すなわち肩関節の内旋外旋が少なかったからと思われる。ゴール直前の動画を見ても特に余計なムーブはない。しかしながら、今後スピードアップに伴い影響が顕れることも予測されるので、どこかで強化する必要があろうと思われる。

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