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下剤と腸内細菌叢と認知症

便秘と言えば使うクスリは下剤と思っておられる方が多いかと思います。最近発表された文献で「下剤の常用が認知症リスクを高める」といった報告がありましたので、その論文を踏まえて下剤と認知症という一見関係無さそうなものの関連性についてお話をしてみたいと思います。

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本内容はKBSラジオ「さらピン!キョウト」内コーナー「Dr.村西の健康ライフミーティング」内にて 本院院長・村西寛実がお話しした内容をコラムとして掲載しております。

「さらピン!キョウト」番組サイトhttps://www.kbs-kyoto.co.jp/radio/sara/

コラム内容のラジオ録音  

▶ 便秘の定義

まず便秘の定義ですが、何日出ないと便秘でしょう?2日?3日?4日?1週間?さてどれでしょうか?各学会が様々な定義を提唱していますが、日本内科学会の定義では「3日以上便が出ない状態、あるいは毎日排便があっても残便感がある状態」とされています。ややこしいことに、慢性便秘症のガイドラインでは「本来体外へ排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できていない状態」と定義しています。つまりは「排便に関して何らかの不快感を持っている」ということで良いのではないかと個人的には思っています。

▶ 便秘のタイプ

一言で便秘と言ってもいくつかのタイプがあります。「器質性」と言われる何らかの大腸の疾患がある場合の便秘、例えば癌とか炎症性腸疾患などが原因となるタイプがありますので、便秘の方は漫然と市販薬等で様子を見るよりは、一度は消化器内科で詳しい検査をお受け頂いた方が良いかと思います。そして「機能性便秘」、多くの方がこれに当たります。特に原因となる疾患は無いのですが排便の回数が減り、便の停滞時間が長くなり硬い便となり出しにくいとかというのがこれに該当します。次に、気付いていない方が多いかもしれないのは「薬剤性」という他のクスリが原因となって便秘になっているタイプです。代表的なものでいうとパーキンソン病の薬や抗鬱剤、気管支喘息の薬などが挙げられます。多くの薬剤の添付文書を診てもらうと、その頻度に差こそあれ便秘の副作用が記載されています。

▶下剤と認知症の関係

これは40-70歳の50万人くらいを10年間追跡した研究で、下剤の常用が認知症発症リスクを上げるというものです。こんなことを聞いてしまうと、今すぐ下剤の内服を止めないと!と思ってしまう方もおられるかもしれませんが、意味があってその薬を使用しているケースもありますので主治医の先生に相談が必要だということはお伝えしておきと思います。この臨床試験が開始される時点で遡ること過去1か月間、下剤をほぼ毎日内服していた方々を「常用している患者群」と定義して約10年間追跡したところ、下剤を常用していた方、特に便を柔らかくするタイプの下剤を用いていた方の認知症発症リスクが高かったというものでした。認知症といっても色々タイプがあるのですが、その中でも脳の血管が詰まり出血したりなどして発症する血管性認知症のリスクが上がっていました。

▶腸内細菌叢

報告の中で色んな考察がされていますが、下剤の常用が腸内細菌叢へ影響を与えて動脈硬化を進行させた可能性などが触れられています。確かに腸内細菌叢と動脈硬化との関連性は言われていますし、動脈硬化から発症する脳心血管系の疾患との関連性も勿論指摘されていますので確立した証明はなされていませんが、十分にその可能性はあるように思います。腸内細菌叢の状態のあまり良くない方は便秘にもなりやすく、下剤を常用しやすいという事もあろうかと思います。下剤の常用そのものについて考えることも必要ですが、我々の腸に住んで我々のカラダの行く末について重要なカギを握っている腸内細菌叢を良い状態に維持するため何をしていけるのかということを考えて行くことも必要かもしれません。

◆カラダに良いとされる食材『れんこん』

便秘は、一時的に内服薬に依存することは良いかもしれませんが、やはり自然な形で出していくのが最も良いかと思います。当院では腸内細菌叢を調整するサプリメントなども提案しており、それで排便状況が改善する方も多くおられますが、とは言え、まずは食事から・・・ということでレンコンです。不溶性、水溶性の食物繊維を両方含んでいるので便秘改善には最適だと思います。我が家ではシンプルに焼いたりサラダにいれたり、子供のためにハンバーグに混ぜ込んで出ることも良くあります。ぜひ、活用して貰えると良いかと思います。

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