京都御池メディカルクリニック[予防医療、検査、がん治療]

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幹細胞培養上清点滴と動脈硬化性疾患予防の可能性について

幹細胞を用いた治療は、ここ最近再生医療の一つとして取り上げられることが多いですが、今回は当院での取り組みや実際のデータなどを共有しながらお伝えします。まず幹細胞とは何ぞやということですが、「幹となる細胞」、名前の通りであらゆる細胞に分化できる(分化とは、変化すると言い換えると理解しやすいかもしれません)細胞ということになります。この細胞を用いた治療の臨床試験は各国ですでに実施されており、日本でも大学病院などから様々なデータが出ています。私自身の専門領域でもある心臓のカテゴリーにおいても心筋再生医療ということで難治性心不全などに対して実際に臨床的に利用がされているのが現状です。この幹細胞治療がなぜ効果を出すのかということについてはパラクライン効果ということが言われており、簡単に言いますと幹細胞が分泌した成分が種々の効果を出すのではないだろうかという考え方です。この分泌する成分のことをサイトカインと呼びますが、サイトカインには様々なものがすでに発見されており、その効用というのも分かってきています。VEGFやHGFといったものが代表的なもので血管新生や組織、臓器の疾患や傷害に対して,再生を促す効果、病気の進行を抑制する効果などが示されております。その他にも免疫調整、炎症を抑える効果などもあり種々の病態に対して利用が可能なのではと考えられています。また最近よく言われているエクソソームという言葉ですが、エクソソームというのは簡単に言うと細胞同士の間でやり取りをしている手紙みたいなものと思っていただけると理解が進むかもしれません。我々、生命体の細胞はそれぞれが連絡を取り合って細胞がどう行動していくかということを決定していてその連絡の方法としてエクソソームというものを使っているということになります。

ただし、注意しておかなければならないのは一方でまだまだ不明な点も多く存在し、サイトカインもエクソソームも同様に、良い結果をもたらしてくれるものだけでは無く悪い結果を導く可能性のある成分が併存する可能性は否定できないと考えています。サイトカインについては培養過程でどんな幹細胞の培養から得られたものなのか(提供ドナーや培養のための培地など)によってその成分量はかなりの差があると捉えていますし、我々が独自で調べた結果からは製品間の格差が非常に大きく存在しています。我々のグループは信頼できる幹細胞培養上清を作成するのに時間を要したため、当初企業から製品を購入していましたが実際にそれら製品を精査すると炎症性サイトカインと言われる悪さをするサイトカインが大量に含まれていたものも存在しておりそれに関する症例報告を学会発表し警鐘を鳴らしています(2023.6.9 第23回 日本抗加齢医学会総会)。またエクソソームについても同様で、エクソソームというのは量の問題というよりはその質が何よりも重要なのではないかと考えています。つまり先ほどのお話でいうと投与しようとする培養上清が良い結果をもたらす手紙(エクソソーム)をたくさん持っている分には良いのですが、悪い結果をもたらす手紙(エクソソーム)をたくさん持っていた場合には悪い方向に出る可能性も否定はできないということになります。

つまり幹細胞培養上清点滴治療というのは受ける点滴の種類によって効果も異なる可能性があるとも言えるかと思います。ですから、我々は日々りんくうメディカルクリニックに併設している培養施設での実験結果や臨床での応用に関してその検証を繰り返しており、まだ症例報告程度のデータ蓄積にはなりますが発信を続け臨床にフィードバックを行っています。薬剤抵抗の難治性心不全に対して著効した症例(2021.6.25 第21回 日本抗加齢医学会総会)や、脳梗塞後のリハビリに併用し奏功したケースなどに加え動脈硬化性疾患の予防という観点で血管内の炎症を抑える効果も下記のように経験しており投与量や投与期間等に関して検証を継続しているところです。様々な病態や予防に対し可能性を有するアプローチと言える一方で、不明な点や潜在するリスクなども確実に存在するため、我々のクリニックでは患者さんと十分な話し合いを行ったうえで実施するか否か含めた判断をしています。循環器内科の専門医として総合病院で勤務している際には様々な治療や投薬を実施してきましたが、動脈硬化性疾患というのは繰り替えすことが多く、その度に何度も何度も治療を受け薬剤が増え、抵抗性となっていき患者さんの人生を大きく変えることが多くあります。動脈硬化が進行していく一つの背景として血管内に存在する炎症の存在は確かでありその根本的な炎症の部分を抑制しコントロールするというのは妥当なアプローチであろうと考えています。発症予防の方だけでは無く、すでに発症されたあとに再発予防としてもこういったアプローチを取ることは一つの選択肢となる可能性も十分にあると考え検証を継続しています。

◆80歳代女性 高血圧 

脳梗塞・心筋梗塞のご不安からLox indexという検査をお受けになりリスクが高い状況にあった。幹細胞培養上清点滴による介入を行い、特に生活習慣や薬剤などの変化は無いなかで9か月後の検査フォローにおいて大幅なリスク軽減が得られている。

*Lox index:日本国内で行われた、約2,500名を約11年追跡した研究成果がベースになっている脳梗塞・心筋梗塞発症リスクを評価する最新の指標。

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