京都御池メディカルクリニック[予防医療、検査、がん治療]

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漢方のエビデンス

自分自身は西洋医学を進めて来るなかで必要な状況下においては漢方薬を用いてきました。医師のなかでも漢方薬を用いる先生もいれば、ほとんど用いていない先生もおられます。生薬と言われ各主成分を含んでいるので西洋医学における薬剤とは違ったアプローチとなりますが、人間が複雑な生命体である以上、「漢方薬の配合の妙」というのは効果を発揮するケースも多々経験しましたので今回は漢方薬のお話などしてみようと思います。

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本内容はKBSラジオ「さらピン!キョウト」内コーナー「Dr.村西の健康ライフミーティング」内にて本院院長・村西寛実がお話しした内容をコラムとして掲載しております。

「さらピン!キョウト」番組サイト

https://www.kbs-kyoto.co.jp/radio/sara/

コラム内容のラジオ録音

◆お医者さんの漢方薬の捉え方

漢方薬をめぐる面白い調査があります。2015年とやや古いですが、各診療科の医師1000名くらいに「漢方薬を日常的に処方していますか?」と質問すると、ほとんどが日常的に処方していました。

一方で「自分が病気になったならば漢方薬を用いるか?」という質問に対しては、【積極的に服用する】は30%程度、【基本的に服用しない】もしくは【全く服用しない】が合わせて55%程度だったという結果もあります。「エビデンスが無い」や「診断や処方の根拠が乏しい」などが理由のようです。

個人的な見解としては漢方自体が患者の状態を改善させてきた印象の方が強いのですが、非科学的であるといったマイナスイメージがあるのも事実ではあります。 

◆漢方医学は中国の医学なのか

漢方は中国医学をベースとしてはいますが、実は日本人に合うように独自に発展してきた日本の伝統医学になります。漢方医学は、経験に基づいて生まれた生薬の組み合わせで使用する(「配合の妙」)のに対し、中医学は、生薬の一つ一つの効果に基づいて追加追加で組み合わせて使用するという違いがあります。

漢方医学におけるこの「配合の妙」というのは「同じものでも組み合わせ方によって、全体の働きや機能が全然異なるものや優れたものになる」ということを示していまして、その絶妙な組み合わせが複雑な生命体である人間に対して効果を発揮しているのだと個人的には感じています。

◆西洋医学との違いは?

西洋医学は病気の原因を探っていく・研究していくことで発展してきたもので、漢方医学は経験的な医学を通して体系化されたものです。どちらが良い・悪いということではなく、どちらも人間にとって必要なアプローチですので融合できるのが一番良いと思いますが、それぞれには根本的な違いはあります。

漢方薬については、臨床研究のなかでもエビデンスレベルが高いと言われているRCT(ランダム化比較試験)も実施されていて、その報告も徐々にあがってきています。

ただ、漢方薬の選択というのは病名や症状だけで決めるのではなく、体質・体力・抵抗力や症状の現れ方などの個人差も加味して決められます。例えば、頭痛の患者さんに対して、冷えを伴う頭痛か、冷えを伴わない頭痛か、あるいは風邪でも「寒気のする風邪」か「熱が高く暑い風邪」かによって選択する漢方が異なるというわけです。そういった意味で、RCTではその効果の十分なエビデンスが出し切れていない漢方薬もあるのではないのかなと思ったりしています。

◆科学的に立証されてきている漢方薬の効果

論文としての格が高い『Gut』という雑誌に載った研究で使用された漢方(厳密に言うと中医学での漢方)がありまして、インパクトのある結果で当院でも取り扱っておりますので簡単に紹介します。

この研究では、1000人以上の肝細胞癌を手術した患者を対象に、手術後、「フアイア」という漢方薬を内服した群と内服していない群を比較したところ、フアイアを内服した患者の方が再発率・生存率が良かったと出ています。また、副作用として見られたのが下痢だけだったというのも、この漢方薬の負担の少なさを表しているのかなと思います。癌に罹患された患者様・治療が終わった患者様の、何とかして再発は予防したいというところには様々なアプローチが考えられます。が、データ・エビデンスという観点だけから言いますと、フアイアは肝臓がん切除後の再発率を下げる可能性は高いと思われます。

他にも乳癌や大腸癌などの患者で同じような臨床試験が進んでいますし、他国においては肝臓癌、胃癌、大腸癌、肺癌、乳癌などで保険適応されている例もありますので、やはり期待できるものと考えています。

◆「フアイア」はなぜ効くのか

このフアイアの効果の背景にあると考えられているのが、「免疫中庸」という考え方で、この「中庸」というのは難しい言葉ですが、過不足なくバランスが取れているという言葉になります。つまり免疫低下の状態であらばそれを引き上げ、免疫過剰(アレルギーとか自己免疫疾患とかそうですが)の状態であらばそれを引き下げるといった「免疫中庸」の効果が出ているのではと考えられています。実は今回ご紹介した臨床試験以外でもエビデンスレベルとしてはまだ低いものではありますが、気管支喘息や尋常性乾癬といわれる免疫過剰状態に対するフアイアの効果に関する臨床試験などもありますので、まだまだこれからも様々なデータが出て来るのかもしれません。

◆カラダに良いとされる食材『きのこ』

今日ご紹介した「フアイア」ですが、実はきのこ由来の生薬になります。「きのこ」といっても様々ありますが、シイタケ、マイタケ、エノキタケ、しめじ、なめたけと色々ありますがそれぞれが含有している栄養分は少し異なります。いずれも食物繊維から腸内細菌叢の調整に繋がりますし、各種ビタミン・ミネラルも豊富に含まれていますので毎日の食事でキノコ類を食べてもらっても良いくらいに考えていますのでお味噌汁に入れるもあり、煮物に使うもあり、焼いたり揚げたり(AGEsが蓄積してしまいますが)、毎日の食事に取り入れてもらえればと思っています。

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