腸内細菌の秘めたる働き
腸内細菌に関しては以前から各種メディアでも様々取り上げられているので医療者である僕よりも詳しい方も多いかもしれませんが、今日は腸内細菌の持っている秘めたるチカラと、一人一人のお腹の中にいる腸内細菌叢を解析する検査や、疾患によってはその腸内細菌叢ごと自分の腸内に移植するという治療法がありますのでその辺りも少しふれることができればと思います。
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本内容はKBSラジオ「さらピン!キョウト」内コーナー「Dr.村西の健康ライフミーティング」内にて本院院長・村西寛実がお話しした内容をコラムとして掲載しております。
「さらピン!キョウト」番組サイト
https://www.kbs-kyoto.co.jp/radio/sara/
コラム内容のラジオ録音
◆腸内細菌とは何か?
そもそも、まず腸内細菌というのは当たり前の話になりますが腸の内部に存在している細菌ということになります。ヒトの腸内には1000種類、100兆個もの腸内細菌が共存していると言われていますが、その腸内細菌が塊となって腸内細菌叢(叢というのは草むらという意味で腸内フローラともいわれます)と呼ばれる腸管の壁に張り付く状態で存在しています。実はこの、腸内細菌叢が我々人間のカラダの機能維持と密接に関係していることがよく分かっていて、消化器疾患以外にも実に様々な各種疾患群やアレルギーなどとの関連性も様々分かってきています。簡単に言いますとこの腸内細菌叢を良好に維持しておく、腸を元気にしておくことは健康維持に必ず繋がると言って過言ではないように思います。
◆腸内細菌叢の働きとは何か?
まずはもちろんですが食物の消化・吸収の促進を担っています。いくらカラダに良い栄養やビタミンの豊富なものを摂取したとしても腸内細菌叢が悪い状態でいると、それらが十分に吸収できずに効率は非常に悪くなります。つまり、「日々の食事に気を付けましょう!」と何回もラジオでお話をさせて頂いているかもしれませんがその土台としてこの腸内細菌叢を良いものにしておくのは非常に重要です。他にも腸内細菌叢が人間の免疫機能に関与していることが科学的に解明されてきていまして、免疫細胞の70-80%は腸内に存在していることが分かってきています。外来微生物の定着や増殖への抵抗など実にさまざまな働きをしています。コロナウイルスのことで免疫力向上の話を耳にされる機会も多いかもしれませんが、その一つのアプローチとしてこの腸内細菌を整えておくアプローチを行うのは理論的に正しいと考えています。
◆腸内環境と脳・メンタルの関連性
ここ最近は、いわゆる「コロナ疲れ」などでメンタルの調子を崩している方も多いかもしれません。脳腸相関と近年、よく言われるようになっていまして腸内環境と脳の状態、つまりメンタルの状態に相関性があるというものです。幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」という神経伝達物質(セロトニンは気持ちの高ぶりを抑えたり、気分をリラックスさせたりする作用を持ちます)があるのですが、そのセロトニンは腸管内の特定の腸内フローラが関与して生成されていることなどが科学的に証明されてきていまして、うつ状態/うつ病との関連性についても指摘されています。腸内環境が悪化するとメンタルの状態も引きずられるように悪化し、そうなると食生活が乱れさらに腸内環境は悪化するという負のスパイラルに入ってしまいますので、腸内環境には常に目を配り、日々、口から摂取するものについては気を付けておく必要があります。
◆腸内環境とアレルギーの関連性
アレルギーについても腸内細菌叢との関連性はかなり分かってきていまして、制御性T細胞(免疫の暴走を抑える役目をする白血球の1種)を増加させるのは腸内細菌叢の中で酪酸(らくさん)を産生する酪酸菌(納豆とかナチュラルチーズとかに含まれています)というのが判明しています。僕自身もアトピー性皮膚炎で、アレルギーも強くて花粉症の時期などは非常に辛く抗ヒスタミン剤を継続し続けていました。自分自身は10年来、いわゆる「腸活」をしていますが、直近で調べたアレルギー検査においてスギやヒノキ、猫など以前からあったアレルギーの反応が複数消えていた結果を見てかなり実感はしていますし勿論腸活を続けて来院される患者様には健康維持のベース、土台として入れて頂くようお勧めしています。
◆幼少期に腸内細菌の種類はある程度確立する
様々な秘めたるチカラの持ち主である「腸内細菌」ですが、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の大きくわけて3種類の細菌が競合しあって生活していて、そのメンバーは5-7歳くらいで概ね決定されると言われています。ですので、個人的な話にはなりますが、私の息子は今4歳ですが、腸内環境エリートを目指してすでに腸活を始めています。頭は賢くなくても良いので腸は元気でいて欲しいと強く思っています(笑)。成人になり、その後のライフスタイルによって腸内細菌の量や種類はもちろん変化をしますので日々のライフスタイルが重要なのは間違いない事実です。添加物や保存料をできる限り回避して、口うるさくいわれる食物繊維、野菜や芋類、キノコ類、海藻類、豆類などを中心にバランスの良い食生活を組み立てること、納豆・ヨーグルトなどの発酵食品を基本として乳酸菌サプリメントなども併用して健康維持のため腸内環境を良好に維持する努力は続けていくと良いと思います。
◆腸内細菌叢の検査について
最近では次世代シークエンサーと言われる機械を使用し、ご自身の腸内細菌叢を全解析する検査もあり腸内環境の現状を把握しておくことで今後の腸活の方向性を決めて行くといった取り組みがされていますし当院でも実施可能です。欧米においては偽膜性腸炎と言われる疾患、潰瘍性大腸炎・クローン病といった炎症性腸疾患に対して糞便移植と言われる腸内細菌叢を移植する治療も行われていてすでにガイドラインに載っていたりもします。腸内細菌叢に対するこういったアプローチはさまざま活発化していますし、病気の方だけではなく健康な方が健康な生活を維持していくための一つのアプローチとして日々の暮らしの中に腸活を取り入れていくのは非常に良いと思いますし、自分自身や子供を含めた家族でそういったアプローチを継続しています。
◆腸内環境を整えるため、食物繊維の多い『バナナ』
バナナは食物繊維も多いですし、オリゴ糖といって食物繊維と同じ役割ですが善玉菌のエサになるものが豊富に含まれていますので良いかなと思います。バナナにヨーグルトをかけて朝食でいただく方もいらっしゃると思いますが、これは非常にバランスがよくて生きている腸内細菌が含まれているヨーグルト(プロバイオティクス)に加えてバナナの食物繊維とオリゴ糖(プレバイオティクス)が相乗的に効くので自分自身も日々の暮らしの中に取り入れていますし息子も食べています。バナナは各種ビタミン・ミネラルも含まれていますので朝食にバナナとヨーグルトの組み合わせ、ぜひ試してみて欲しいと思います。