自由診療の意義とは?②
前回は自由診療の意義①について私の見解をお話しました。今年最後のコラムは、そういったアプローチを通して私自身が患者さんから学ばせていただいたことをお話しします。
(1)乳癌ステージIII-bの方
保険診療の主治医先生に対して、説明が高圧的で今後について不明瞭な伝え方であると感じられたことから不安が募り、他の治療法などを調べ当院へいらっしゃいました。当院でははじめに患者さんの状態を整理し、保険診療での治療の方向性を確認したうえで、患者さんにとって“何が引っ掛かっているのか?”という点をお伺いし、その中で自由診療アプローチのエビデンス、データの有無、妥当性、それを選択した場合、その先はどうなっていくことが考えられるのか?といったこと等をお伝えしました。前回のコラムで記載したギャップともいえますが、漠然とした不安から当院へいらっしゃる方が他にも多くおられます。この方は、主治医先生と顔を合わせづらいとのことだったので、私の方から他の医療機関へ紹介し標準治療を実施できるように対応させていただきました。結果、標準治療は奏功し現在も再発無く元気に過ごしておられます。
(2)種々の不調が長く続く未成年の方
多くの医療機関で精密検査を受けてこられましたが異常は指摘されず、最終的には精神科の受診を勧められたことから、当院へセカンドオピニオンでいらっしゃいました。その頃には学校に通うことも困難になっていらっしゃいました。この方の場合にも、これまでの検査結果や治療内容を確認のうえ、とにかくたくさんお話をさせていただきました。今までの経過のなかで患者さんにとって“何が引っ掛かっているのか?”を伺い、その上でこれまでとは異なる検査や治療を提案し一緒に進めてきました。最終的には数年間悩んで来られた不調は消え、笑顔を取り戻し元気に力強く人生を歩んでおられます。
この方々以外にも同じようなことを何度も経験させていただきました。そこに共通するのは患者さんにとって“何が引っ掛かっているのか?”という点なのだと感じています。それは患者さんによって千差万別ですが、その引っ掛かりをどう解消していくのかを一緒に模索するのも、自由診療の意義の一つだと思っている今日この頃です。
保険診療、EBM (Evidence Based Medicine)という確立した医療は素晴らしいものである一方、それで解決できない時に解決策を失ってしまう患者さんたちが存在しているという現状は理解をして医師として研鑽していく所存です。
今年度はあともう少しで終わりますが、また来年度もそういった患者さんのチカラになることができればと考えています。