エビデンスって何でしょうか・・・
この件については指摘している医師もいるため、何らかのメディアを通して知っている方もおられるかもしれません。
そのエムポックス(サル痘)に対する治療薬(テコビリマト)の日本における承認について、EBM(Evidence Based Medicine)という観点からその謎について、少し触れたいと思います。
当院では自由診療による治療介入をしております。それは保険診療において提供されているEBMに基づいた確固たるアプローチが少ないが故に、私は我々が提供するアプローチの根拠となる論文などを山ほど読んだ上で、日々の患者さんの治療に伴走しています。
医師にとって患者さんに何か提供する場合にその根拠、EBMというのは非常に重要な位置を占めています。ですから保険診療においては尚のことと、自分自身は考えています。
テコビリマトは、2022年時点で欧州において承認を得ている薬剤でありましたが、その後実施された500人強、700人強の比較的大きな臨床試験(PALM007試験 & STOMP試験)ではその有効性に関して否定的な結果が出ています。
それを受けて欧州では承認取り消しの方向に動く可能性すらある状況下にも関わらず、日本においてはそれが承認されるという謎の決定が厚労省の管轄である独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA;Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)によってなされています。
EBMという観点では全く逆の動きとなっていると言っても良いかと思います。このとこは有名な科学誌Scienceも同様の意見を出しており、「In a ‘shocker’ decision, Japan approves mpox drug that failed in two efficacy trials」(日本は「衝撃的な」決定で、2つの有効性試験で失敗したMPOX薬を承認した)との記事を報告しています。
(引用:https://www.science.org/content/article/shocker-decision-japan-approves-mpox-drug-failed-two-efficacy-trials?_fsi=UIQNiw6P)
儲けのためにエビデンスの乏しい治療法を提供している、ということで揶揄されることも多い自由診療ではあります。
しかしながら私は、通常の治療アプローチでは改善が無い症例でも、患者さん一人一人と徹底的と話し込みます。
と同時に、観察し客観的データを深くまで読み込むことを欠かせません。そうすることで異なるアプローチの可能性が見えてきます。その結果、改善していく症例を現場においては幾度も経験してきました。
今回のテコビリマト承認の件については臨床試験や他国の動きを見ても疑問符が付くものであり、エビデンスっていったい何なのだろう??と考えさせられました。今後も一人の医師としてそういったところに常に意識を張り最新論文を通して情報を取得しながら適切な情報提供と各患者さんにとっての最適な決断を後押しできるよう努めていきたいと考えています。
