健康を維持するために必要な運動
前回お話したのがMETSという運動のキツさの単位や有酸素運動・無酸素運動に関することでした。今回は運動がどのような疾病との関連性があるかといったお話で、①生活習慣病、②癌、③老化といった観点に分けて簡単にお話を致します。
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本内容はKBSラジオ「さらピン!キョウト」内コーナー「Dr.村西の健康ライフミーティング」内にて 本院院長・村西寛実がお話しした内容をコラムとして掲載しております。
「さらピン!キョウト」番組サイトhttps://www.kbs-kyoto.co.jp/radio/sara/
コラム内容のラジオ録音
◆生活習慣病と運動の関係
生活習慣病についてはウォーキングなどの運動を習慣化することで、高血圧や高コレステロール、糖尿病のリスクを減少でき、健康寿命を延ばせるということはすでに数多くの研究で示されています。一方で中高年になっていまさら運動始めるのも億劫だと仰る方が多いのも現実です。そういった方に知って頂きたいのですが、イギリスのケンブリッジ大学などが中心になって実施した研究では、体重1kg辺り240kcal、つまりは50kgの人で12000kcalの活動量を1年間で増やすことによって、死亡リスクを25%減少させ、心血管リスクは29%、癌のリスクを11%低下させるということが分かりました。1日10分程度のウォーキングを毎日行ったと仮定するとそれくらいの活動量の増加に繋がります。クタクタのカラダに鞭打って30分1時間のウォーキングというのはなかなか難しいですが、一つ先の駅まで歩くみたいなことでいうと意外に毎日でもできそうな気がします。私自身は駅まで30分歩いていますし(自転車に乗るときもありますが)、階段を使うとか、こういったところで普段の活動量を稼いでいくというのは良さそうですね。中高年の方でもいまから運動を始めても遅くはありませんのでぜひ、知識として知っておいてください。
◆がんと運動の関係
様々な海外の文献報告からまとめられた直近のメタ解析の結果から言えるのは、結腸癌(いわゆる大腸癌)に対する運動の予防効果はほぼ確実にありそうで、相対リスクが概ね20-25%軽減されています。それについては国立がん研究センター主導の日本人を対象とした大規模研究もありまして、特に男性における結腸癌のリスク軽減は活動量に応じて20%~40%という結果でした。閉経後の乳がんや子宮体がんに対する運動の予防効果も“可能性あり”とされていまして、日本人女性54000人弱を対象とした研究では、運動による乳癌の発症リスク27%減という結果が報告されています。その他にも、血液中を循環している癌細胞に関しても、大腸癌患者少人数ですが、運動によって減少に繋がったという報告もあります。予防したい方は勿論ですが、標準治療を終了され今後再発の予防を図りたい方にはぜひ運動を習慣化して頂くのが良いと考えています。
◆老化と運動の関係
老化と運動との関連性で言いますと、認知機能への効果やフレイルと呼ばれる筋力や心肺機能の低下に対する効果が挙げられると思います。この点についても現在までに様々な報告が数多く存在していて、厚労省や各医師会からもフレイル対策として運動が推奨されています。認知症予防についても週3回以上の運動習慣がある高齢者の方は、3回未満しか運動しない高齢者に対して、認知症になるリスクが38%減といった報告など数多くあります。ですから運動が認知症予防に有効というのはどうやら確からしいと言えるのでないでしょうか。認知症やフレイルだけではなくて老年性うつをはじめとしたメンタルヘルスの観点からも人生後半戦の健康ライフのために、運動が強い味方になってくれるのは間違いないかと考えています。
◆適度な運動習慣が大切
運動のやり方については様々ありますのでどれが一番良いというのは難しいですが、中高年の方は今からでも全く遅くないです。むしろ人生の後半戦には運動は必需品で、1日の中で動く量を意識的に増やしてもらうだけでもどうやら恩恵はありそうであると覚えておいて頂ければと考えます。
◆カラダに良いとされる食材『とろろ昆布』
運動後の疲労回復に役立てて欲しいということと、実は我が家の娘が1歳なのですがとろろ昆布が好きなようでしていつも無心になって食べているので今回はこれを出してみました。私自身は味噌汁に入れたり、オニギリにバサッとまぶして食べたり我が家の食卓ではよく登場します。美味しいですし、昆布に含まれるフコキサンチンという成分が代謝を活性化しますのでぜひ運動に合わせてもらうとよいと思います。