CTC血中循環がん細胞とがんの転移
今日は血中循環癌細胞と転移再発のお話をさせて頂きます。転移再発予防の治療方法が確立されていれば、もちろんそれがガイドラインで治療法となっているわけですが、なかなかこれをやっておけば問題無いですと言う治療法は今のところないというのが正直なところかと思います。ただ、その転移のメカニズムなどは分かってきていることも多いので、そのあたりのお話をさせていただきます。
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本内容はKBSラジオ「さらピン!キョウト」内コーナー「Dr.村西の健康ライフミーティング」内にて本院院長・村西寛実がお話しした内容をコラムとして掲載しております。
「さらピン!キョウト」番組サイト
https://www.kbs-kyoto.co.jp/radio/sara/
コラム内容のラジオ録音
◆癌細胞が増える過程において体内で起こっていること
癌細胞が増えていく過程において癌細胞は多くの栄養や酸素を消費しますが、増えるために必要な物質を取り込むために、新生血管と呼ばれる新しい血管を作り出し元来我々のカラダにある血管に合流し、増殖に必要な栄養な酸素を取り込むようになります。少し話はそれますがその新生血管が作り出されるのを抑える分子標的剤のアバスチンというものなどが理論上効くことになりますし、臨床現場で使用され一定の効果が出ています。
癌細胞が作り出す新生血管と全身を巡っている血管が繋がると、その繋がった血管を介して癌細胞が全身をめぐる血液中に流れ込むようになります。これを血中循環癌細胞と言い、名前の通り血液中を循環している癌細胞ということになります。この血中循環癌細胞が血液のなかを回り続けて、どこか遠いところで浸潤し腰を落ち着けて増殖し始めてしまうとそれが「転移再発」ということになります。癌の治療をしていくに当たってこの転移を防ぐというのが重要なのは明らかなのですが、その転移のメカニズムにはこういった背景があると考えられているということは今日、覚えておいて頂いくと良いかと思います。
◆癌の種類により、循環癌細胞と患者様の予後に関連はあるか
「循環癌細胞と癌患者さんの予後」との関連性については以前から様々な臨床研究がなされており、乳癌・前立腺癌、直腸癌ではこの循環癌細胞の数が少ない患者さんの方が生命予後は良いという結果が複数の論文で発表されていますし、New England Journal of Medicineという医学会ではそれはそれは有名な雑誌にも掲載されています。加えて、治療によりこの循環癌細胞の数が少なくなった患者さんの群は、治療によってその数が増えてしまった患者さんの群よりも生命予後がよかったという結果も併せて発表がされています。
◆循環癌細胞へのアプローチ
癌といえども様々な種類がありますので一概には言えませんが、どうやらこの循環癌細胞にアプローチしてその数を減らすという努力をしていくのは転移再発予防のアプロ―チとして理論上正しい方向であろうと考えています。最近では、この循環癌細胞の数だけではなくて、循環癌細胞の顔つきが悪い顔つきになっているのか?つまりは循環癌細胞が浸潤する能力を身に付けて悪性度を上げているのかどうか、そういったことが段階的にあることも徐々にですが分かってきています。つまり、悪さをしない循環癌細胞や自己免疫に倒されてしまった循環癌細胞の死骸が血液中を回っているならまだしも、顔つきの悪い循環癌細胞があり、しかもその数が増えている状態ならそれは転移再発のリスクが高いという判断になりますので、画像上癌が見えていなくても何らかの治療介入をしておくのが良いように考えています。
https://kyoto.krg.or.jp/screening/ctc/(CTC(血中循環がん細胞)検査)
◆循環癌細胞に対する治療
これがなかなかエビデンスという観点においてはエビデンスレベルが高い治療介入というのは今の段階では僕が知っている限りにおいて無いと言うのが正直なところではありますが、欧米においては様々な臨床介入がなされています。クルクミンやビタミンCといったいくつかの天然成分の点滴やサプリメント、腸内細菌叢の調整などが挙げられます。また、1年前にアメリカから出された発表ですが皮膚がんの一種であるメラノーマ30名程度の患者様の肘のところの静脈に対してレーザーを外部から当てこの循環癌細胞を発見し、破壊するようなレーザー治療の有用性が報告されています。とにもかくにも、目指すべき癌再発予防に対し検査や治療技術の開発が日進月歩で進んでいる状況なのでこの辺りは情報をアップデートしながら客観的な観点で患者様に提供させて頂いております。目の前に再発予防したい患者さんがいる、そして検査や効果が期待できる治療介入は複数あるけれどもエビデンスレベルという観点で言うとまだ低い段階であるというこのジレンマのなかで診療を進めています。今なされている治療介入の効果が5年後、10年後に確認されるということは十分あり得ると思いますが、今はその治療の理論的な背景や限られたデータを集めながら患者さんには情報提供させていただきお話をさせていただいています。いずれにしても以前からかなり口うるさく言っていますが、食品添加物や保存料を避けてバランスの良い食生活を送ること、定期的に正しい方法で運動を続けること、これは無料で今からも明日からもご自身の意思で始められることなのでその大原則をまずはしっかりとやって欲しいと考えています。
◆カラダによいとされる食材『納豆』
納豆好きですか??関東の方はお好きな方も多いと思いますが、関西の方は昔から食べていないのであまり好きではないとおっしゃる方も多いかと思います。(納豆品評会で審査員を務められた竹内さん曰く、京都府民の方々は実は納豆に馴染みが深く、遠い過去から京北より質の良い豆が京の都に送られていた経緯などあり関西に納豆の方が質が良い、美味しいという話でありました) 納豆を含めた発酵食品は腸内環境を整えることによって食事から摂取している栄養価の消化吸収がよくなったり,便通の改善や免疫力を向上させることが知られています。発酵食品のなかでも納豆は人体に不可欠な必須アミノ酸群をバランスよく含んでおり、多くのミネラル成分や食物繊維なども豊富に含んでいます。納豆菌は熱に負けない、胃酸にも負けない非常に強い菌なので宇宙空間でも生きていけるといった都市伝説的なものまでありますが、腸までしっかり届いてくれるその強さを持っているので個人的には最強ではないかなと思っています。ちなみに僕は週の半分以上は食べていて、カラダを健康に保つようにしていますがぜひ、食べたことが無い人はぜひ試してもらって最強の納豆菌をカラダに入れてあげて欲しいなと思っています。