当院では自由診療にはなりますが、健康診断などでは調べることが殆どない項目についても検査し、その結果を参考に予防的な介入を目指しています。その中で通称「悪玉アミノ酸」とも呼ばれる項目があり、ご紹介させて頂きます。悪玉コレステロールというのは皆様お聞きになったことがあるかと思いますが、悪玉アミノ酸は皆様ご存知でしょうか？

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本内容はKBSラジオ「さらピン!キョウト」内コーナー「Dr.村西の健康ライフミーティング」内にて 本院院長・村西寛実がお話しした内容をコラムとして掲載しております。

「さらピン!キョウト」番組サイトhttps://www.kbs-kyoto.co.jp/radio/sara/

コラム内容のラジオ録音 　

◆「悪玉アミノ酸」とは

まずアミノ酸というのはタンパク質を構成している成分です。我々のカラダの筋肉や皮膚、爪、内臓や様々なものがタンパク質から出来ていますが、そのタンパク質を作っているのがアミノ酸です。このアミノ酸には20種類あり、そのうち9種類は人間が体内で合成することができないもので、必須アミノ酸と呼ばれています。必須アミノ酸の一つのメチオニンが代謝される過程で「ホモシステイン」というアミノ酸が出来上がってきます。このホモシステインは酸化を抑える(つまりカラダがサビるのを防ぐ)成分の原料となるなど重要な役割を担っているのですが、一方で過剰に蓄積した状態となってしまうとそれがかえって悪さをしているということが分かっています。このホモシステインは通称悪玉アミノ酸とも呼ばれ、当院では健康維持のための一つの指標として採血でチェックをさせて頂いています。

◆ホモシステインが過剰に溜まらないようにするには？

代謝の過程でできるホモシステインを、更に先の代謝経路へと誘導していく栄養素が充足していれば、過剰な蓄積を避けることができると今は考えられています。そこで重要なのがビタミンB群（“夏バテ”についてのコラム)で、中でも特にビタミンB6、B12、葉酸という成分が重要になってきます。人間は日々ストレスや飲酒によってもビタミンB群を消費しながら生きていますが、そのうえで炭水化物中心の食生活となっている場合には意外にビタミンB群が相対的に足りない状況になっている方も多いと思います。バランスの良い食事は勿論のこと、ご自身の状況を把握して場合によってはサプリメントにて補充しておくことも悪い選択肢ではないように考えています。自分も食事の状況を見ながら、飲酒もしますので、ビタミンB群についてはサプリメントで補充していることもよくあります。人間はビタミン類を自分の体内で合成できないので食事などから摂取する他ないのですが、実は腸内細菌叢もこういったビタミンB群を産生してくれていることが分かっていますので、いつもお話しているお腹の中の細菌たちを大事にする生活習慣を持って頂くとカラダやココロにとって良いことがあるように思います。

◆ホモシステインと疾患との関連性

少しだけこのホモシステインと疾患との関連性といった観点で掻い摘んでお話ししますと、実に様々な疾患との関連性が報告をされています。ホモシステイン自体は種々の病気の根源と言える活性酸素によって血管内皮細胞の機能を落として劣化させることが既に報告されていますし、血管の主要成分であるコラーゲンの構造変化も引き起こして血管のしなやかさとか弾力を失わせて血管を硬くする、いわゆる動脈硬化に繋がっていくといったメカニズムで考えられています。ホモシステインが15μmol/L以上となっている場合には4倍以上心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが高くなるとの報告や、高い状態が維持されているとアルツハイマー型認知症のリスクが2倍以上に高まるとの報告もあります。ホモシステインが高い状態がこういった疾患群の原因なのか、あるいは結果なのかといった議論やそれについて調査した報告もありますが、いずれにしても通常の健診の採血ではあまり調べることのない項目ですので一度、ご自身の数値を知っておいて予防的な介入として生活習慣の改善や修正などの行動変容へと繋げて貰えたらという風に思っています。

◆カラダに良いとされる食材『ほうれん草』

今回ご紹介する食材は如何にもカラダに良さそうな「ほうれん草」です。ホモシステインを減少させるという点でもほうれん草の抽出物から見つかった葉酸が豊富に含まれています。他にもご存じのように鉄分も多いですし、ビタミンCも多く含まれています。ウイルスが流行する冬にちゃんとビタミンCが多く含まれているこういった食材を自然が用意してくれていますのでぜひ感謝して食べて頂ければと思います。