京都御池メディカルクリニック[予防医療、検査、がん治療]

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癌転移の第一歩目は活性酸素からの逃避行動?

 つい先日、京都大学工学部の先生方から上記のような報告がなされており自分としては興味深い報告でありました。

 その報告は、モデルマウスを用いた実験系であり、すぐに臨床として何かが確実に言えるということではありません。
しかしながら局所的な活性酸素の蓄積という癌を取り巻く微小環境が、転移の第一歩目と捉えることができそうだといいます。そして更に好中球が活性酸素の発生源であるということも判明しているとしています。
 この研究では、「抗酸化剤の投与によって活性酸素種を除去することで転移の初期過程を阻止できる可能性が示唆されました。」と述べられています。
 一方で、抗酸化物質の摂取によって悪性黒色腫のリンパ節転移が促進されることや、酸化ストレスが遠隔転移の抑制に寄与していることなども報告されていることから、安易に抗酸化物質を摂取するというのも注意が必要だとも言えます。

 翻って、当院で実施している高濃度ビタミンC治療については、抗酸化物質の代表格になります。エビデンスレベルとしては非常に低いものにはなりますが、当院での経験的にみて、高濃度VC点滴によるアプローチに伴ってCTC(血中循環癌細胞)が減少傾向となった症例も複数存在しております。
 また、東京工科大学応用生物学研究チームの先生方が2018年に、高濃度ビタミンC点滴による癌転移のメカニズムについての報告をされています(https://www.iv-therapy.org/wp-content/uploads/2020/08/fbb8bf046a3ddd062c9acf93fd36fba7.pdf)。 

 よく追い込まれた時の対応として「闘争」か「逃走」かという言葉がありますが、多くの生物と同じく癌細胞自体も自身を破壊しようとする活性酸素種からの「逃走」を図ろうとしているというのは興味深いことだなと思い、この報告を見ていました。
 高濃度ビタミンCについては決定的なエビデンスの欠如から敬遠されることも多くあります。が、特に当院では再発予防としての位置づけとして、1か月に1回程度の頻度で継続されることを提案しています。

 何か気になることがある方はぜひご連絡頂ければという風に思っています。

(https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1427319)から引用

参考文献
1) Sci Transl Med. 7, 308re8 (2015)
2) Nature. 527, 186-191 (2015)
3) Nat Cell Biol. 2025 Feb 21. Epub ahead of print. 
4) Reactive Oxygen Species. Vol. 6 No. 17 (2018)
5) Reactive Oxygen Species. Vol. 9 No. 25 (2020)

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