京都マラソンを通して再認識したこと
前回のコラムでは京都マラソン初完走の記事を書きましたが、今回は走っている時に感じたことを徒然に書きたいと思います。
走っている時に何度も脚が止まりそうになりましたし、止めたらどれだけ楽だろうという思いが何度も頭をよぎりました。 しかし不特定多数の方々、そして自分の家族の応援がチカラになって、そこで笑顔が出て最後の坂道も止まることなく走り続けることができました。
いつもながら走っていて思うのは応援のチカラというものです。脚を止めていたら何か後悔を残していたかもしれませんが、応援をチカラに脚を止めなかったことから得られた感情がありました。おかげでゴールした後に、脚が長時間攣って動けませんでしたが(笑)。
翻って当院では、癌の患者さんを拝見することが良くあります。そして標準治療による治療選択肢を失った多くの方がご来院されます。医療者なら誰もが知っている癌患者さんの心理状態の変動というものがあります。それは以下のように癌患者さんの心理というのは、病気が発覚したときから治療経過を経て変動していきます。

当院では、あらゆるフェーズの癌患者さんを受け入れていますので、様々な方がおられます。特に上記のフェーズ4~5の方の割合が多いのが現状です。標準治療の選択肢がなくなると患者さんは、絶望的な気持ちを持たれることが多くあります。 その反面、医療者の多くは緩和医療を実践することが、患者さんにとっての最善策であると考えて、それを自動的に進めていきます。
もちろん緩和医療の実際を知っている自分としても、それが良い選択肢であることは十分に理解をしています。 が、患者さん自身や家族の捉え方としては、必ずしもそうでは無いこともよくあります。フェーズ4でも5でもやはりそこには希望というものが残っていて、それは周囲の励ましや応援というものがベースにあるのではないかな、と個人的には考えています。
一方で、患者さんの状態によっては応援自体が辛く感じる方もおられるでしょうし、頑張ることが最適な答えでは無い方もいらっしゃるでしょう。一人ひとりの価値観や持っている考え方、その時の状態に依存するため、杓子定規に答えを出していくことは非常に難しいのが現実です。
それでもまだ応援をバックに頑張りたい、脚を使って進みたいと思っている方々を今までも診てきました。
当院では患者さんやご家族との話し合いの時間を長く持ち、自由診療ゆえ提供できることのデータや限界点も含めて表裏無くお伝えをしております。その上でご納得いただきご自身の意思で治療を受けられれば、我々はその伴走者を務めることがよくあります。
このようにご納得の上で当院の治療を開始される方もいれば、最期に向けて納得され終了される方もいます。こればかりは人それぞれです。
全ては患者さんの納得が重要と思っており、話をしっかりとして、脚を止めるのか、脚を止めずにもう少し走ってみるのか一緒に考えて悩んで決定していくこと。このことが患者さんの最後の最後の納得に繋がっているものと信じて、自分自身は行動しています。
残念ながら自由診療群には、ビジネス目的でそういった治療介入をしているところも多く存在します。常々それを歯痒くも思っているので、自分としては様々な治療についての見識を広め、それらについて現状存在する客観的なデータを含めた説明をするように心がけています。
これからも適切な応援者として、患者さんが自分の意思で脚を進めること、もしくは脚を止めることを今後も応援していきたいと思っています。
