魚や海藻類に多い栄養素ーEPA
妻の実家は山口県の瀬戸内海の島なのですが、ご両親が農作物を作られ、さらに漁業もされます。今回の帰省中にもやはりサカナの食卓への登場頻度が高く、子供たちもよく食べていました。「サカナはカラダにええよ」というのは皆様ご存じかと思いますが、どれくらい食べていますか?
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本内容はKBSラジオ「さらピン!キョウト」内コーナー「Dr.村西の健康ライフミーティング」内にて 本院院長・村西寛実がお話しした内容をコラムとして掲載しております。
「さらピン!キョウト」番組サイトhttps://www.kbs-kyoto.co.jp/radio/sara/
コラム内容のラジオ録音
▶脂肪酸とは? ―EPAとAA―
私自身もそうですが、最近の若い方は特にサカナを食べる頻度が下がっているのではないかと思っています。中年から出てくる動脈硬化という観点においては、魚の摂取により得られるEPA(エイコサペンタエン酸)と、AA(アラキドン酸)という脂肪酸の比率が関係しているという報告は以前から複数あり、この辺りを初回ご受診の患者様や定期的に通院頂いている方にはお話ししています。いきなりEPAとかAAとか出てきて話が難しくなりましたが、人間のカラダが細胞を作ったり、エネルギーとして使うものの中に脂肪酸というものがあり、EPAやAAはその脂肪酸の種類の一つです。
▶ EPAはサカナや海藻類に多い
EPAはサカナや海藻類などに多く含まれるもので、体内で合成できるものではないため食事からどれくらい摂取しているかによってその人のカラダに含まれるEPAの量が決まってきます。つまり、魚や海藻類の摂取の少ない方はおのずとEPAは少なく、摂取量の多い方はEPAが多いということになります。一方でAA(アラキドン酸)はと言いますと、動物性脂肪=お肉に多くて、植物油(よく使われている油)に含まれるリノール酸からもアラキドン酸は生成されます。現代人の食事では、植物性の油が使われているところは無数にありまして不足していることはまず無く、むしろ摂取過剰となっていることが多いです。そしてそれを割り算したものがEPA/AA比という数値で出てきます。
▶ EPA/AA比とは
EPAは炎症を抑える効果があり、動脈硬化に起因する心血管疾患、癌や糖尿病など様々な疾患の根源である慢性的な炎症(当院では活性酸素として採血でチェックしています)を抑制する作用を発揮するのではないかと考えられています。一方アラキドン酸は適度な量は必要ですが、過剰になると慢性的な炎症を進めて体内の活性酸素量を増加させ各種疾患へと繋がってくると考えています。イメージ的にはサカナや海藻類を摂取せずに、脂ものが多い外食の頻度が高い方、出来合いの総菜ばかり食べている方だと、魚や海藻類の摂取が少ないのでEPAは下がります、そして脂ものの摂取が多いと体内のアラキドン酸は上がります、結果EPA(分子)が小さくなってAA(分母)が大きくなり、EPA/AA比は下がってきます。
▶ 比率が低いとどうなる?
これを使った臨床研究が複数存在しています。日本人を対象にした久山町研究という九州大学が中心となって実施している研究報告のなかでも、このEPA/AA比が0.29未満の群は0.29以上の群に比べて有意に心血管疾患発症率が高いということが言われています。詳細は割愛しますが、この比率が低いとインスリンが効きにくいカラダになることや、発がんリスクとの関連性も報告をされています。この比率が低下する場合には分子(EPA)が小さくなるか、分母(AA)が大きくなるかですが、魚海藻類などの摂取が低いと分子は小さくなっていきますし、植物性油の摂取が多いと分母が大きくなります。魚を食べていてEPAがある程度高くても、AAが過剰で比率が下がっている人もいらっしゃいます。そういった方はサカナを増やすのではなくて、植物性油の摂取を控える必要があるかなと言う指導になります。
▶ 十分な比率になるには
私自身のこのEPA/AA比、実は0.15だったんですね。サカナの摂取は自宅での夕食で週に2回は食べていて、海藻類はほぼ毎日(味噌汁にわかめやとろろ、海苔など)朝食で摂取していたのですが、結構衝撃的な結果で現在その辺りの食生活にテコ入れをしています。今回は情けない結果ではありましたが、また半年後か1年後くらいに計測して報告してみようと思います。当院でもこのEPA/AA比を採血でチェックしていますので、皆様も気になるようでしたら一度、お問い合わせ頂ければと思います。
◆カラダに良いとされる食材『寒ブリ』
EPAは体内で合成できないので食事として摂取していきましょうというお話をしましたが、冬に美味しい寒ブリをご紹介いたします。100gあたりのEPA含有量が比較的多い魚でもあります。刺身は効率よく摂取できますが、ブリしゃぶ、ブリ大根も美味しいので色々と試して貰うと良いかもしれません。