がん治療・再発予防水素吸入療法
水素ガスを吸入し活性酸素を除去することで、
がんの進行抑制、がん治療による副作用の軽減、がんになりにくい体質を目指す治療
治療内容
水素吸入療法は、体内に蓄積する酸化力が強いヒドロキシラジカルを消去して、酸化ストレスを軽減する治療です。
私たちの体細胞の中にあるミトコンドリアは、酸素を使って細胞のさまざまな活動に必要なエネルギーを生み出します。その際に発生する活性酸素種 (Reactive Oxygen Species:ROS)には、スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素があり、これらはタンパク質や脂質、DNAなどを酸化することで細胞傷害を引き起こし、さまざまな疾患の原因になると考えられています。特に反応性の高いヒドロキシラジカルは、老化やがん、糖尿病、高血圧などの数多くの疾患に深く関わっている、最も危険な活性酸素とされています。
水素吸入療法は、水素(H2)ガスを酸素とともに吸引し、体内に取り込む治療です。水素を吸引することで、有害なヒドロキシラジカルを除去して、病気の改善や予防を目指します。
水素ガスの有用性は、日本の3大死因とされている「悪性新生物(がん)」「心疾患」、「脳血管疾患」のほか、患者数の多い糖尿病や軽度認知症などでも臨床試験において有用性が確認されています。
また水素ガスは安全性も高く、有害な活性酸素であるヒドロキシラジカルに反応して無害な水(H2O)に変化し、やがて体外に排出されます。仮に過剰に摂取しても、皮膚や髪の毛の先から体外へ抜け出します。
水素吸入治療の根拠
2020年現在日本において水素ガスを吸入する療法は、「心停止後症候群」に先進医療として認定されています。
心停止後症候群については、突然に心停止することによって救急蘇生術までに脳や臓器の機能が損なわれ、回復後に高度の障害が残ったり植物状態になるなどの後遺症が課題としてありました。
従来の低体温療法では限界があることから、水素ガスを酸素に加えて吸引することでダメージを軽減する目的で実施されています。
2007年のNature Medicine誌に、水素分子は生体内で毒性の高い活性酸素種を選択的に還元する抗酸化物であることが太田成男教授らの論文※により報じられると、H2用いた抗酸化予防・治療法の研究が急速に広まりました。
がんに対する効果
当クリニックでは、がんの予防・進行抑制・治療時の副作用の軽減を図る医療としても積極的に、水素吸入療法を導入しています。
動物モデルを含む実験では、シスプラチン(抗がん剤)の腎毒性の軽減や、心臓や肺の放射線障害の軽減をはじめ、がんの予防効果や免疫学的効果が認められています。
以下に、期待される効果とその臨床試験などのエビデンスを掲載します。
がん予防
■ヒドロキシラジカルの選択的除去による発癌予防
水素水で発がんの原因と考えられる活性酸素・ヒドロキシラジカルを選択的に除去して、発がん予防効果を明らかにするラット実験が行われています。
ヒトウイルソン病のモデル動物であるLECラットを使用し、脱水素水を投与したグループでは肝臓に著名な腫瘍形成が認められたのに対して、飽和水素水を投与したグループでは、肝臓における腫瘍形成が著しく抑えられていたことが示されました。
(大阪市立大学 がん疫学・予防 基盤研究(C) 研究課題/領域番号:23501323)
がん進行抑制
■水素ガスの免疫学的効果
水素ガスによって、いわゆる免疫チェックポイント阻害効果が得られることも示されています。がん細胞が体内の免疫(T細胞など)にブレーキをかけている状態を阻害し、免疫細胞をふたたび活性化することが臨床試験で判明しています。
熊本県玉名市の玉名地域保健医療センターで、ステージ4のがん患者37名にこれまでの治療に加えて水素吸入を行ってもらい6カ月間データを取ったところ、有効率75.7%、奏効率32.4%という良好な結果が出ました。さらに、ステージ4からステージ3へ移行したケースや、腫瘍の縮小が確認されたケース、吐き気や倦怠感などの軽減が見られました。
がん治療時の副作用の軽減
■シスプラチン腎毒性に対する水素水の効果
主要な抗がん剤として使用されるシスプラチンは、プラチナ(白金)を含む金属化合物で、がん細胞内のDNAに結合し分裂を止めて死滅させます。副作用として強い腎障害を引き起こすため、投与前後には大量補液と強制利尿が行われています。
ラットによる実験では、水素を多く含む水を摂取したラットに、シスプラチン腎毒性による腎機能障害の改善効果が認められています。
■放射線治療による副作用に対する水素水の効果
がん治療で受ける放射線治療の副作用には、疲労やQOL(生活の質)の低下があげられます。これは放射線被爆による活性酸素の発生で、酸化ストレスや炎症が増加するのが理由であると考えられています。
臨床試験では、放射線治療を受けている患者に水素を含有させた水を飲用してもらい、無作為プラセボ比較を行いました。水素水を飲用した群では、放射線治療中のQOLスコアが顕著に良好であることが示されました。
このように水素には、がんの進行抑制や、がん治療時の抗がん剤や放射線治療による副作用が抑制できる効果、さらにがんにかかりにくい体質に改善する効果も期待できることから、保険では認められてはいませんが、水素吸入治療を行っています。
期待できる効果
予防
- 肌及び臓器の老化抑制
- 抗炎症作用によるアレルギー反応の抑制
- がん、動脈硬化、糖尿病の予防
- 肥満・メタボリックシンドロームの予防
- 疲労回復 など
がん再発防止
- 抗がん剤の副作用の軽減
- 放射線治療の副作用の軽減
- 抗腫瘍効果による腫瘍の縮小
- 免疫学的効果
※ 2021年12月18日~19日にWEB開催された「第25回日本統合医療学会」において、当院院長・村西寛実が「水素吸入療法を含めた統合的アプローチが状態改善に寄与した Crohn 病患者の一例」として発表を行いました。 標準治療下において炎症反応が遷延増悪していた クローン(Crohn) 病患者に対し水素吸入療法、亜鉛補充療法、短鎖脂肪酸バイオジェニックス製剤を用いた統合的アプローチにて炎症反応の改善維持を得た一例について発表し、炎症性腸疾患(IBD )に対する水素吸入療法、亜鉛補充療法、短鎖脂肪酸バイオジェニクス製剤を用いた統合的アプローチがその病勢制御の一助となる可能性を示しました。
リスク・副作用
- 吐気・嘔吐
- 気分不良
- 頻尿
- 催眠
除外基準
以下の患者については、治療対象から除外されます。
- 1) 重篤なアレルギーを有する、あるいは既往のある患者
- 2) 重篤な活動性感染症を有する患者
- 3) 治療を要する重篤な精神障害を有する患者
- 4) 酸素非投与での動脈血酸素飽和度が94%未満の患者
- 5) 透析を必要とする腎障害患者
- 6) 妊婦あるいは妊娠している可能性のある患者および授乳中の患者
- 7) その他、本治療により不利益を受けると予測される患者、および本人ならびに家族(あるいは親族)の文書による同意が得られない患者など
未承認医薬品等であることの明示、入手経路等の明示
水素ガス吸入療法(水素吸入療法と同治療)は「心停止後症候群(院外心停止患者に対する水素ガス吸入療法)」において、2016年に厚生労働省が認める「先進医療」となりましたが、本治療は承認医療機器の承認目的外使用となります。日本国内では、未承認医療機器を医師の責任において使用することができます。
※近年問題となっている活性水素、マイナス水素イオン、プラズマ水素などの効果を謳う商品類と、当治療で応用する分子状水素(H2)とは無関係です。
国内の承認医薬品等の有無の明示
保険適応されている上記疾患に対する、医薬品医療機器等法上の承認医療機器は存在しますが、予防目的において承認を得ている医療機器はありません。
諸外国における安全性等に係る情報の明示
諸外国で重篤な安全性情報の報告はありません。
治療の流れ
(当院での治療は通院してお受けいただいております)
STEP-1 カウンセリング・問診医師が状態を診断し、治療の内容について詳しくご説明致します。
STEP-2 水素吸入療法1回60分吸入していただきます。
※治療頻度や回数については医師とご相談いただいております
STEP-3 治療効果の評価1セット治療の終了後に、治療効果を評価します。
また、検査の結果等参考にその後継続可能な治療を検討致します。